植物の力

子供の頃、風邪気味だったりすると生姜湯を飲まされたり、喉が痛いとドクダミやビワの葉を煎じてうがいをさせられたりしませんでしたか?今では色々な市販薬が家庭には常備されていますが、昔は身近な植物の力を借りて体調を整えていたのです。

そうすることで身体に備わる自然治癒力を高めることを人々は知っていたのですね。

中欧では家庭で今でも市販薬の他に数種類の植物(ハーブ)を常備しています。生命力が最も強い時季の花や葉を、自分で摘んで干して利用するのだそうです。

ニワトコやキンミズヒキなどは代表的な常備ハーブで、煎じた液を患部につけたり、うがいをしたり、飲んだり、日常の手当てによく使われていました。

街中の薬局では様々なメディカルハーブが売られていて、病院でも希望するとハーブの処方箋を出してくれるそうです。

日本にもメディカルハーブの考えは古くからあり、現代にもいき続けているのだそうです。

「薬草」がそれで、ドクダミは十薬とも言われていて、古くから民間薬の代表です。抗菌・利尿作用があり、虫刺されや皮膚のかゆみや高血圧の予防に広く利用されていました。

ビワの葉は古くは奈良時代からの療法で、葉や種に含まれるアミグダリンという成分が、消炎作用があると言われ、現代でも自然療法として注目されています。また、秋の七草の中のススキ以外の6種類は薬草として用いられ、中でも葛の根は「葛根」で、発汗・解熱・鎮痛作用があるとされ、「葛根湯」として親しまれています。

一方、薬草とは言われていませんが、その効能を日常的に利用している生姜は、体を温める作用があるので、寒気がする風邪のひき始めには効果があります。

草団子に入れるヨモギも薬草の一つで、「病を艾める」という意味から漢方名では(艾葉)と呼ばれ、その効能や栄養価の高さから万能薬とも言われていました。食べる以外にもお茶にして飲んだり、止血剤として切り傷につけたり、入浴剤として湯船に入れたり、お灸のもぐさもこのヨモギなのです。

器官や臓器・組織など、目で見ることのできる異常を治療するのが現代医学であれば、自然療法は、気やエネルギーなど目には見えない波動にまで視野を広げて身体全体の健康を考えるもの。都会に住んでいると難しそうに感じますが、ふと道端に目を向けて見ると様々な植物が自生していることに気づきます。

体の不調を感じた時は、医療による早めの手当てが必要ではありますが、それに頼りすぎることは自分の体を人任せにしてしまうことにもつながります。自分の身体を自分で調える。そんな基本に立ち返り、先人たちが見出してきた植物のその薬効は、私たち現代人の生活の中にもう一度取り入れれば、健康な身体を作る力になるに違いありません。

植物の薬効は優しく身体に働きかけ、心の健康にも役立つと言われます。煎じてお茶にしてあげることで相手の体調を思いやる心があり、その温もりが体調を和らげてくれます。身体に取り込むことが一番ですが、温泉に浸かって効能を得るように、服が身体を包み込み、皮膚に優しく心にその効能を取り入れることは、人間として必要なことだと思います。こうして家庭に自然な形で取り込むことができ、その考えを受け継いでいくことで、初めて自然の恩恵を受けることができ、共存・共栄ができるのだと思います。